ふなっしーになりたかった

サラリーマンとしてそこそこ成功することを考えるブログ

残業時間で成果を測る裁量労働制の会社に所属していました

この辺の記事がちょっと気になったので書きました。 裁量労働制は、時間からの解放を意味しないという実例です。

bonotake.hatenablog.com news.tbs.co.jp

10年以上前のこと。

私が新卒で入社した会社は、入社初日から、全社員が裁量労働制で働く契約になっていた。

当時は、裁量労働制について、政府や経団連が言っているような「時間にとらわれない自由な働き方」というイメージが少なからずあったため、私自身もそれを望んでいた。 「就業経験が全くない新人に裁量?」と疑問も浮かんだが、「すぐに裁量を手に入れ、大きな成果を上げ、高い報酬を受け取れるだろう」という謎の自信がその疑問を打ち消した。

入社後、新人は4人1組のチームに分けられ、電話番をしながら独学でプログラムを学ぶという業務が与えられた。 「電話は必ず1コールで取る」との指示があり、それを達成するために、席を立つ際は必ず報告する義務があった。 9時から朝礼、電話番のため19時までは着席必須、トイレに行くのにも許可がいるという環境で、裁量は全くなかった。

数か月後、電話番の仕事がようやく終わり、プロジェクトに配属されることになった。 プロジェクトの内容は、商品のベースとなるシステムの改修。4人1組で半年~1年かけてシステムを改修するという業務だった。

「ようやくプログラムが書ける」と最初はチームメンバー全員で喜んでいたが、開始して約3か月が経過した時点で異変が起きた。 あるメンバーだけ、全く進捗が無くなってしまったのだ。

最初は適性の問題を疑った。元々遅れが目立つメンバーでもあったため、タスクの難易度が上がって来たことで、彼だけ停滞してしまっているのかと思っていた。 私は彼と仲が良かったため、「わからない所があったら相談して」と毎日のように言っていたが、彼は「ありがとう」というだけで、全く相談をしてこなかった。

それから数日後、一緒に昼食を食べている時、彼から衝撃の告白を受けた。

「俺、全く仕事してないけど、毎日24時過ぎまで残ってるんだ」 「ネットサーフィンで何とか時間つぶしてるけど、20時過ぎたら監視が緩くなるからトイレでゲームとかやってる」 「真面目に仕事やっても意味ないからサボった方が良いよ、先輩から査定のルール聞いたんだけど、残業時間が長い人が評価される仕組みなんだってさ」

何を馬鹿なことを、と思いながらも、思い当たるふしはあった。 彼の進捗があまりに遅いため、上司に相談した際「あいつは遅くまで毎日頑張ってるから許してやれ、あいつを見習ってお前ももっと仕事したらどうだ」と言われたことがあったからだ。

成果主義を強くうたう会社であり、裁量労働制も「成果以外見ないからこその制度」と断言する会社でそんなことがあるだろうか? 疑問は感じたが、「真面目に仕事をすれば、結果は返ってくる」と信じ、サボる彼を置いてタスクをこなすことに集中することにした。

それから約半年が過ぎ、私は新人賞を取った。 新人賞とは、毎年20名前後入る新人の中で、2,3名が投票によって選ばれる賞のことだ。 「自分は正当に評価されている、これなら大丈夫」と少し安心したことを覚えている。

しかし、入社から1年が経過した時点で、私が間違っていたことを理解した。 サボっていた彼の昇給、賞与額は、私を上回っていた。 私に明細を見せながら、彼は「な、本当だったろ」と得意げに言っていた。

彼は1年間、本当に何もしなかった。他のメンバーが100件以上のタスクをこなす中、彼がこなしたタスクは10件にも満たなかった。だが、彼は評価されていた。

私は、社内に2人、尊敬している先輩がいた。上司は信用ならないが、先輩ならきっと答えてくれるはず。そう考え、先輩にこのことを打ち明けてみた。 先輩の答えは、想像を絶するものだった。

「これ、本当は教えちゃいけないんだけど教えるよ」 「この会社では、残業時間×基本給×係数っていう形で、賞与の額を計算してる」 「これは残業代を最低賃金で支払うより遥かに低い額になるんだけど、残業代の変わりが賞与って考えでこうしてるらしい」 「昇給も当然、評価=残業時間なので、そこから計算してる。でも俺はお前のことを上司に推してたから、もっと昇給してると思ってた」 「裁量労働制って言っても、この会社は残業時間が長い人が評価されるようになってる。長く残業すること自体が成果」 「俺も抗議したことあるけど、成果は会社が決めるものだから、全く問題無いって言われた」

話し終えた後、先輩は繰り返し謝っていた。

私はそれから転職活動を始め、約1年後、入社から2年程度経過した時点でその会社を退職した。 その時、20人近く入社していた新人は、3人くらいしか残っていなかったと記憶している。 鬱病を発症した人も、いつからか会社に来なくなった人も数名いた。

これは、裁量労働制を利用する1つの企業の事例でしかない。 しかし、裁量労働制であっても「労働時間を成果とする」ことが可能なことを示している。

ここまで極端な会社は少ないかもしれないが、「遅くまで残ってる=頑張ってる」という感覚評価が当たり前になっている会社は少なくないだろう。

結局のところ、裁量労働制という制度そのものは、自由な働き方を保証しない運用によっては、自由な働き方を実現できる人もいるかもしれない、という程度のものでしかない。

余談だが、あれから10年以上経過し、私も部下の勤怠に対する裁量権をある程度持つようになった。 弊社は裁量労働制は採用していないが、管理対象となる社員の労働時間を8時間換算にして早めに帰らせたり、忙しい案件を終えた際には有給とは別に特別休暇を発行することが認められている。 労働者にとって有利になる処置であれば、運用上取り入れることは可能と社労士からもお墨付きをもらっている。

裁量労働制を導入しなければ自由な働き方を実現できないと思っている経営者の方は、是非、検討してみてはいかがだろうか。