ふなっしーになりたかった

氷河期サバイバーの雑記

都会と田舎の賃金格差は不当なのだろうか

私は田舎出身だ。

夜になれば街灯の少ない道は足元も見えなくなり、夏~秋は虫の鳴き声が激しすぎて耳が痛くなる。友人の家に行くのにバスを利用するのは普通のことで、最終バスは17時台だ。そんな田舎で、私は生まれ育った。

中学生まではその生活で何の問題もなかったが、高校生になると多少はお金が必要になってきた。服を買うでもない、娯楽施設に出かけるわけでもない。しかし、通学時間が延び、部活に顔を出す必要も生じたため、結果、帰宅が遅くなり、買い食いなどの機会が増えた。

そこでアルバイトを始めた。私のアルバイト経験は、今世間で言われているような「田舎は大変」とは程遠いものだった。

田舎の仕事事情は、表では「仕事が無い」「低賃金」という側面にフォーカスされがちだ。それはその通り、事実と言える。しかし、田舎の仕事事情は、そんな負の側面だけで構成されているわけではない。

仕事が楽なのだ。

当たり前だが、「仕事が無い」と言われるくらいなので、仕事がある場所であっても仕事の総量は少ない。大都市圏のように、激しい競争を繰り広げて、昼夜を問わず仕事をしている人はほとんどいない。悪い意味だけでなく、良い意味でも仕事が無い。

例えばコンビニの夜勤などは都会とは比較にならない。都会のコンビニは、いつ訪れても数名の客が居るが、田舎のコンビニは本当に客がいない。棚卸し作業などは発生するが、日によっては客が一人も訪れないことすらある。

高校卒業後、コンビニの夜勤で生計を立てていた友人は、いつもレジ横にある控室にいて、客が来た時だけ対応していたという。朝までに5人以上来ることは珍しかったので、非常に楽な仕事だったそうだ。彼はバイト中に十分な睡眠をとり(細切れだが)、朝になるとパチンコ屋に出かけていくのが日常だった。

ここで一つ疑問がある。都会と田舎の賃金格差がたびたび話題になるが、田舎の賃金が低いのは不当なのだろうか。

日本人のサービスに対する意識は過剰だ。地方であっても、都会同様のサービスを求められる。それなのに、賃金だけが安いとなれば不満が出るのは当然だろう。

また、物価も都会と田舎で大差はない。大差があるのは家賃など不動産が絡むものだけだ。競争原理の関係で都会の方が物価が安いことすらある。これで田舎の方が賃金が低いのだから、最低限の生活を営むのすら難しい人が出てくるのは、想像に難くない。

しかし、労働者が提供するサービスの総量は、都会と田舎で雲泥の差がある。1日に100人しか客の来ないコンビニと、1日に2000人の客が来るコンビニ。全く同じ賃金が支払われるとしたら、あなたはどちらで働きたいと思うだろうか。控室で十分に休憩をとりながら働ける環境と、座る間もなく働き続けなければならない環境、どちらを望むだろうか。

客が多いということはたくさんの売上を生むということでもある。たくさんの売上を生んだ人が、そうでない人とほとんど変わらない賃金しか受け取れないのは正当だろうか。

生み出した経済価値と受け取る報酬は比例すべきだ。しかし、生活に必要な予算と、その人が生み出せる経済価値は比例しない。そして、能力に関わらず経済価値を生み出しにくい土地がある。

田舎で十分な生活費を稼ぐのが難しいのは事実だ。しかし、十分な経済価値を生み出せない以上、賃金だけを上げるのが難しいのも当然だ。これは、国や自治体が対応すべき課題で、賃金で対応すべき課題ではないのではないか。

本当に賃金格差は不当なのだろうか。

単純に「田舎でも、生活に困るからもっと賃金が欲しい」という話であれば理解は出来るのだが、都会との賃金差を「不当」と捉えるのは間違っているのではないだろうか。